お兄ちゃんが、見てる。[短51P]
 だったらどうして、トオルくんはあんなにお兄ちゃんに怯えていたの?


 そう疑問を口にする前に、心地よいリズムであたしは眠くなってきた。


「なら、いいけど――」


 昔から、お母さんがいくら抱いても泣き止まなかったあたしは、お兄ちゃんに抱かれると嘘のように泣き止んだらしい。


 それは今でも変わらない。


 どんなに悲しくても、怒っていても、お兄ちゃんに抱きしめられると、途端にあたしの心は軽くなる。



 そう、魔法がかかったように……。

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