オレンジ色の校舎





「誰がくれたんだろーね、瀬川くんにチョコ」



ニヤニヤしながらあたしを見る麻衣。そんな顔しないでよっ。



「言っちゃえばいいじゃん。渡したのはあたしって」



「むむ無理っ。練習風景まで覗き見しちゃったし言えないっ」



「でも瀬川くんは誰から貰ったか気にするよ?」


わかってるけど…バレたくない。



「でも、『瀬川』って俺の名前が書いてあるから、俺が貰っていいんだよな?」



瀬川くん達の会話に遠くからコクコク頷くあたし。



「まー、なんなら俺が貰ってもいいけど?」



たっちーがウインクをしながら言った。えぇっ!?あれは瀬川くんへのチョコなんだからっ。



「バーカ。誰が健真に渡すかよ。俺のだっつの」



「ちぇっ。朱希のケチー」



同時に安堵の息を吐くあたし。なんだか朝から疲れちゃってるよ、自分。



「…にしても、チョコくれたの誰なんだろう。誰だかわかんないから、お礼も言えないや」



ポツリと呟いた瀬川くんの言葉に少し、胸が痛んだ。…ごめんね、瀬川くん。






< 52 / 574 >

この作品をシェア

pagetop