オレンジ色の校舎





「マジ?何貰ったの?」



「…の、のど飴」



「は?のど飴?」



麻衣は驚きを隠せず、目をまん丸くしてあたしを見た。



だけどね、嬉しいの。これが片想いの甘酸っぱさだもん。片想いだからこそのど飴でも嬉しくて、目が合うだけでも嬉しくって。



「おはよう、浅井に永納!」



だからこそ、苦しくて。その優しさが君への『好き』を増やしていって…



「おはよう、瀬川くん」



「お…おはっ…」



あたしは今日も、瀬川くんに上手く挨拶が出来ないんだ。



「遥、いい加減挨拶くらい出来るようになりなよ」



「む…無理だよっ。昨日もずっと傍にいてくれて迷惑かけちゃったし…」



「もーぐだぐだ言わないのっ」



窓から入り込んだ風から、ほのかに桜の香りがした。



高校2年生が終わる。もうすぐ4月が来る。高校3年生になる。






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