わがまま娘の葛藤。
美女の宣戦布告



漫画か童話みたいに小鳥がさえずるっているわけではないが、雲一つない青空で迎える朝はそれなりに気持ちがいいもの。

昨晩もやっぱり一滴もアルコールを摂取しなかったため、二日酔いに悩まされるわけでもなく、バイトも大学も休みという、パラダイスな一日のスタートとしてはなかなかだった。

ただ、いつも隣でぐうぐうと眠っているはずの見慣れた男がいないことに、多少なりとも胸が痛んだけれど。


一人分のコーヒーを入れることに若干の違和感を感じながら、ベッド脇のiPhoneに手を伸ばす。

メールは3件。
うち2通はメルマガで、もう1通は大地くんからだった。

珍しい。
もともと、あんまりメールが好きな人ではないし(栞がよく嘆いている)、連絡事項以外で、あたしにメールを送ってきたことなんてなかったから。


『おはよう。昨日、大丈夫だったか?蘭とのことはあんまり気にするなよ』

多分、栞からあたしの様子を聞いたんだろう。
もしくは礼のほうから話がいってるのか。

でも、気にするなと言われて、そんな簡単にできるなら困っていないし、どうやったってそんなこと無理に決まっている。
昨日の礼と大地くんの動揺からしても、きっとただの元カノじゃないんだろう。


礼と大地くんは、高校時代からの付き合いらしい。
お互い腐れ縁だなんて言ってるけど、あたしが知らない過去のことだって、きっとたくさん知っているに違いない。

礼のいないところで、まるで詮索するかのような行為に罪悪感を抱かないわけではなかったが、それでも知りたいという欲求に素直に従うことにした。


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