ハッピー・クルージング~海でみつけた、愛のかけら~
愛のかけら
 
辛い思い出がいっぱいある、海にまつわる仕事。

それでもこの仕事を『やりがいがあって、楽しい』と思えるのは……。



「賢い裕香ちゃんには、もう見抜かれてると思うけどさ。

今更遅いけど、ほんの少しでも親孝行している気分になれたらって考えた。

父と約束してたんだ。

『俺も船乗りになって、父さんと一緒に漁へ出る』って。

一緒に漁に出ることは叶わなかったけど、船乗りにはなれただろ。

父にとって大きな脅威だった国境も、クルーズ船ではそこを越えていくことが喜びになる。

自己満足だけど、約束を果たせた気持ちになれた」


その言葉に、大きく頷いた。


「ただ、海の上は油断してはならない場所だっていうのが、俺の中で刷り込まれてる。

平和な海であっても、何が起こるかわからない。

何かが起こった時、瞬時に的確な判断ができないと、命はもちろん、国際問題にも関わる船の上では、常に業務に集中すべき。

たとえ、休憩時間であったとしても。

入社以来、それは変わらない。

いや……正確には変わらない、はずだったんだけどな」

< 251 / 332 >

この作品をシェア

pagetop