夜色オオカミ

あたしの愛する狼





深い森の奥



時刻は午後10時を回ったところ。



黒いワンピースに身を包み、右手には暗い夜道を照らすランプと、左手には甘く香る白い百合の花束が…闇夜に鮮やかに浮かぶ。



「………。」



不意に、あたしを見守ってくれているような…花嫁の月――半月を見上げた。



見上げた月に微笑んで、あたしはまた前を向いて歩みを進める。



「……!……あ……。あれかな…?」



開けてきた視界の先に



古めかしい、大きな石碑……。



側面には大きく《真神家》と彫られたこれは……








…真神家のお墓。














「…逢いに来ましたよ。」









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