楽園の炎
第八章
午後になって、朱夏はナスル姫を捜して、意外なところに足を踏み入れた。

「おお、朱夏ぁ。何だぁ? すっかりやつれちまって。お前もナスル姫様を見習って、元気出せってんだ」

ナスル姫は、今日も憂杏と一緒にいると聞いたのだが、その二人は、まさかの台所にいたのだ。

信じられない思いで台所に入った朱夏は、椅子に座って焼き菓子を頬張る憂杏の声に迎えられた。
料理人の使う中央のテーブルには、大皿に焼き菓子が盛られ、その周りは無惨な程に、いろいろなものが散らかっている。

「あら朱夏! 元気になった? ね、これ見て! わたくしが作ったのよ!」

晴れやかな声に視線を向けると、何をしたのか粉まみれになったナスル姫が、机の下からぴょこんと顔を出した。

「ひ、姫! 何をしているのですか」

何故憂杏が椅子に座っているのに、ナスル姫が床にいるのか(しかも机の下に)。
朱夏は慌てて駆け寄り、ナスル姫の前に跪いた。
床も一面、いろいろなものが散乱している。

「ああ、汚れるわよ。いいから、ほら。椅子に座って。ねぇこれ! 凄いでしょ?」

朱夏を半ば強引に椅子にかけさせ、ナスル姫は、興奮気味に焼き菓子の乗った大皿を、どん、と朱夏の前に置いた。

以前ナスル姫に誘われた、お茶のときに出されたものと似ているようだが、全体的に歪(いびつ)だ。
大きさも、こぶし大のものがあるかと思えば、その半分もないぐらいのものなど、ばらばらだ。
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