楽園の炎
第三章
次の日、朱夏は憂杏と共に、町の市へと繰り出していた。

「ね、あの鎖じゃ、合わなかったの?」

憂杏の大きな背中を追いかけながら、朱夏はそこここにある出店に、忙しく視線をやりながら声をかけた。

「いやぁ、鎖はいいんだよ。剣のほうだな、問題は。直接穴を開ける程の太さもないんでね。金具でもつけて、鎖を通さにゃ」

憂杏は、手先が器用だ。
各地で仕入れた物を、自分で加工して売ったりもするので、大抵の物は自分で作ることができる。

今日は、朱夏の頼んだ剣を首飾りにするための材料を、仕入れに来たのだ。

「それにしても、市は相変わらず、活気があるねぇ。こんなに人が集まるのなんて、市ぐらいだよね」

ごった返す人波を縫うように歩きながら、朱夏は憂杏とはぐれないように必死だ。

「そうだな。今は特に、ククルカンからの一行に交じって入ってきた、外の商人も多いからな。そうそう、お姫様が来たんだって?」

「うん。第二皇女だって。昨日、お会いした。可愛らしい姫君だったよ」

「ほぉ。第二皇女といやぁ、ククルカン皇帝溺愛の皇女じゃないか。そいつを送り込むたぁ・・・・・・」

意味ありげに笑う憂杏は、まばらに生えた顎髭をさすりながら、しばらくにやにやしていたが、不意に前方の一点を見、足を速めた。
朱夏も慌ててついて行く。

「いたいた。旅の途中で知り合ったんだが、良い商品を扱う奴がいてな」

言いながら、出店の一つに近づくと、憂杏は店の奥の天幕を、勢い良く跳ね上げた。
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