楽園の炎
第三十章
「うわ・・・・・・凄い」

翌日の夕方、遠目に見えてきたククルカンの城に、朱夏は声を上げた。
大帝国の城らしく、建物はまだ小さくしか見えないのに、少し先にはもう城壁らしきものが見える。

「ずっと宮殿って思ってたから、アルファルドと大して変わらないイメージだったけど。そんなわけないよね。・・・・・・お城かぁ・・・・・・」

よくよく考えれば、コアトルの宮殿がアルファルドの王宮と同じぐらいということが、すでに格の違いを表しているのだ。
一都市の知事の住まいと、一国の王の住まいが、同格なのだから。

「そういやアルファルドは、城、ではなかったな」

「うん。お城って、初めて。凄いね、さすが、圧巻」

そうかな、と呟き、夕星は少し馬を走らせて、隊の前に向かった。
城門に近づくと、門前に立っていた兵士が、ぱっと駆け寄ってくる。

「夕星様! お帰りなさいませ!」

「おいおい。近衛隊長補佐官ともあろうものが、何故自ら門前にいるのだ」

夕星が、呆れたように言う。

駆け寄ってきたのは、壮年の兵士だった。
醸し出す雰囲気が、他の兵士とは明らかに違っている。
近衛隊長補佐官ということは、この者も夕星の近衛隊の一員なのだろう。
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