楽園の炎
第三十一章
「う~ん・・・・・・」

鏡の前で、朱夏は剣を片手に、きょろきょろしていた。
今日はナスル姫からもらった衣装を着ている。
やはりどうしても、あまりひらひらしていないものを選んでしまうが。

「まぁ朱夏様。何してらっしゃるんです。御髪も結わないで」

入ってきたアルが、呆れた声を上げる。

「今日は皇后様に、お茶のお誘いを受けているのでしょう? 遅れたら一大事ですわよ」

さぁさぁ、と朱夏を急かして椅子にかけさせ、髪を梳く。
朱夏は鏡越しにアルを見ながら、手に持ったままの剣を翳して見せた。

「やっぱりさぁ、腰に剣がないと、不安というか。そりゃあ警護もついてるけど、最終的には、自分で何とかしないといけないだろうしね」

「皇后様のところに、剣をぶら下げて行く気ですか?」

「駄目かな、やっぱり」

剣を弄ぶ朱夏に、アルはやれやれ、というように、息をついた。
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