暴風うさぎ
impurity or purity




外は立っているのがやっとの暴風雨で自転車は使えない。傘だってすぐに折れるだろうし頼れるのは自分の足だけだった。


『……っ…しょーがねぇな』


俺はパーカーを深く被り、雨の中を走り出した。



昔一度だけこんな風に宇佐美が居なくなった時があった。

それは母親が死んで1ヶ月経った頃の事。

父親からの連絡で担任や話を耳にした数人の友達が見付けに行ったけど見つからなかった。


次の日の朝、宇佐美はいつもと変わらない姿で現れて『ちょっと一人で考え事してた』と言った。


俺は宇佐美が一晩どこに居たのか予想は出来た。

優等生で周りに迷惑をかけたくない性格の宇佐美が唯一思い付く反抗的な事とは

真夜中の学校に忍び込む事だったから。


そんな話を小学生の頃した事があって、俺なら窓も割ると言ったら怒られたっけ。

それぐらい宇佐美は不器用で、学校に忍び込む事しか思い付かないほど悪い事をした事がない。


宇佐美は随分と変わったけど、その生真面目さと不器用な所だけは今も変わってないと思う。




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