Fahrenheit -華氏-

■Perfume(香り)


「彼女が新入社員?」


チェック早いぜ。早速柏木さんに目をつけてやがる。


「柏木です。宜しくお願い致します。えっと…」


「俺、階下の麻野デス♪システム管理室の主任です。ちなみに内線番号は703ね。何かあったら、何もなくても。いつでも電話してね」


「はあ」


柏木さんはまるで奇異な動物でも見るような目つきで裕二を見上げている。


「おいっ!べっぴんさんじゃねぇか。やったな、啓人」


俺の耳元で裕二がこそっと囁いた。


「うるせ。お前何の用があって来たんだよ。用がないなら帰れっ」


「つれないこと言うなよ。新入社員ちゃんの、パソコン設定に来たんだから」


「さっさと設定して、自分の縄張りに帰れっ」


俺は裕二をぎろりと睨み上げた。


少しでも柏木さんのそばをこいつがウロウロするのは気に食わねぇ。


「はいはい」


裕二はぞんざいに返事を返すと、柏木さんのデスクにさっと移動した。


こういうときだけフットワークが軽い奴め。


俺は裕二の行動を睨むようにじっと見据えた。


裕二は柏木さんの後ろに回り込むと、パソコンのマウスを弄って器用に何かをしている。


その間約5分。


俺も佐々木も、その様子をじっと窺っていた。


「よし、できた。これでアウトルック(メールボックス)に繋げると思うよ?」


にこやかに言うと裕二はさりげなくウィンクをしやがった。


っていうか、くさ過ぎだろ!!


今時ウィンクって!!!



でもこいつがやると妙に様になるんだよな……







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