Fahrenheit -華氏-

■Partner(パートナー)


「ち、違っっっ!!!」


俺は慌てて手を振って全力で否定した。


「だって…お前がそんなに女を庇うなんて初めてじゃね?」


うん、うん。と綾子も頷いている。


「バっ!佐々木のことだってしょっちゅう庇ってるだろ!?」


「佐々木のとは種類が違うだろ?あれはあいつの尻拭いだ」


「そうよ~」


と綾子が同意する。


「や……、庇うもなにも…」


頭がこんがらがってきた。


俺は柏木さんを好きじゃない。女として、ヤりたいかそうでないかと問われればもちろん前者で。


それだけだ。


ただ……


「俺、今まで仕事であんな風に女に怒られたことってなくてさ。会社の女はいつも色気振りまいて近寄ってくるだけだろ?


だから、ちょっと新鮮って言うか…」


俺はもごもごと答えた。


「お前、ドSかと思ってたけど、実はドMだったんだな」


裕二が真剣な顔で俺を見た。


「違っ!」


口では否定したけど、心の中では否めなかった。


実は最近柏木さんに怒られるのがちょっと快感…って俺ドM道まっしぐらじゃねぇか!!!


断じて俺はマゾじゃないぞ!


「あら。あたしだってしょっちゅう怒鳴ってるじゃない」


と綾子がつまらなさそうに口を尖らせる。


「お前を女として見てねぇからだよ」


俺は言ってやった。


「んまっ。失礼しちゃうわ」


綾子が拗ねてつんと顔を背ける。





「でも…柏木さんは女だ。





最初から俺の前であの人は女だった」







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