骨董絵巻[甘い猫]
封を切る
姉から手紙が届きました。


手紙には来月、家に遊びに来る旨が記されており、私の心は浮き立ちました。


姉は随分前に嫁ぎ、遠い地で暮らしているのですが、私のことを心配してまめに手紙をくれます。


数年前に父と母を続けて病で亡くし、同時期に愛猫のタマも死に。当時の私の嘆きようといったら、それはもう。今でもあの絶望を思い出すと目の前が暗くなります。


姉の伴侶、私の義兄ですが大層優しく、気の利くお人柄のようです。私が猫好きと知りこの便箋をくれた、と手紙に綴ってあります。猫の文様を散した愛らしい便箋。姉の使う香水の香が写ったのでしょうか、ほんのり甘い香りも致します。


私にはもう一人、実兄がおります。急逝した父の事業を引き継ぎ、苦労している様子。この頃はお顔の色も優れません。


私が来月の姉夫婦の来訪を告げると、そうかと一言だけ答え、部屋にこもってしまいました。兄は私に心配をかけまいと、何も言ってはくれないのです。


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