【短編】10年越しのバレンタイン
あの人との出会い


 見上げると、高校生くらいのお兄さんが覗き込んでいた。

優しい笑顔。


私は、しゃくりあげながらもその笑顔にみとれた。

「可愛いチョコだね。もしかして手作りじゃない?」

お兄さんの言葉に、私はただコックリと頷く。

私の返事にお兄さんは満足げに笑うと、私の隣に座った。


「いいなぁ、手作りなんて」

お兄さんはしみじみと呟く。

「買ってくれたチョコも美味しいけど、心がこもってるって感じがする」


「でも……『キモイ』って」

気付けば私はそう口にしていた。

言いたくない、言葉を。


「それ、渡そうとした奴に言われた?」

「うん」



「はぁ~、ったく」


お兄さんは大きくため息をつく。

その次の瞬間、お兄さんは私が持っていた箱からチョコを取り出して、ポイッと口に放り込んだ。



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