【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「ねぇ柚。みんなには慣れた?」
みんな、とはRainの人たちのことだろうか。
そう言われてみれば、すんなり溶け込めた気がする。
あたしにしては珍しい。
「あいつらも柚が気に入ったみたいだよ。原田さんもね。」
くすっ、と笑みをこぼす暁くんに首をかしげると、にこりとあたしに微笑みかける。
そんな仕草にドキッと胸が高鳴った。
かあぁっ、と頬が熱くなり、思わず暁くんから目をそらす。
そんなあたしの心情を見透かすみたいに、視界の外で暁くんがくすくすっと笑った。
そんなとき。
ピリリリリリ…
今流行りの曲が流れる車内に、聞き慣れない着信音が響く。
あたしのものではない。
ギアの近くのケータイスタンドにあるケータイがチカチカと光っていた。
前を真っ直ぐ見て運転をしていた暁くんも、一瞬ちらりとケータイを見た。
その時の暁くんの表情は
あたしの知らないものだった…。