孤高の天使

神に選ばれし者たち



「はぁ…はぁ……」

階段を上り詰めた先、神殿へつながる正門前でイヴは一人息を上げていた。

息を整えるために深呼吸を繰り返していたイヴは後ろから近づく存在に気づかなかった。


「イ~ヴ!」

「きゃぁッ!」

後ろからものすごい勢いで飛びついて来た衝撃にイヴはよろめく。


「今日もギリギリセーフね」

フフッと反省のない笑みを零しながら、ふわりと目の前に降りたった二枚羽の天使。



「ギリギリセーフの私よりいつも遅いのはどこの誰かしらね……ラナ」

「だって眠いんだもの。サリミナがもっと日の出の時間を遅らせてくれると良いんだけど」

ぷくっと頬を膨らませて、自分勝手この上ない発言をするのは中位天使のラナでイヴの友人だ。

ウリエル程ではないが、肩につくかつかないかくらいの短い金色の髪で、見た目は可愛いのに性格が男勝り。

ラナに思いを寄せる男も多くいるはずだが、如何せん本人が鈍感であるためことごとく自然消滅していく。



「礼拝ももっと遅い時間にしてほしいわ」

「そんなこと言ってるから上位天使になれないのよ」

「良いのよ、上位天使になんて興味ないから」

ラナはもう少し行いや振る舞いが良ければ上位天使に昇格出来るのだが、当の本人は全く興味がない。そしてこの歯に衣着せぬ物言いだ。ラナも上位天使に目をつけられている者の一人だった。



「礼拝なんて正門が開くまでに来ればいいの。それに……」

ラナに向けられる鋭い視線に心配するイヴをよそに、ラナは相変わらずの口調でそう吐き捨て、視線はある人物を捉える。

そして、あろうことかその人物を指さし、口を開く。




「大天使だってあれよ?」

ムッと口をとがらせて文句を言うラナ。瞬間、ざわつく周囲。



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