課長さんはイジワル
第18話 タイムリミットは3日
どうしよう。

3日しかないなんて。

困り果てているところに佐久間さんの言葉が、更なる追い打ちを掛ける。

「事業会社とか地方とかだったら、望みアリだけど、キンポー(金融法人課の略)は難しいぞ」


だよね~。

みんなプロ中のプロだもんね。

このレートがメチャクチャ高いことはみんな知ってるよね。

はぁ~。

見合い、ホントに、力ずくで決めて、寿退社コース、ゲットしなきゃな。


不幸のどん底にいる時でも、昔聞いたムカつく課長の言葉が頭をよぎる。


『出来ない理由を探している暇があったら、出来る可能性を探せ!』


ん~。

出来る可能性……?


頭を抱えている私の目に、モニター電話の内線がパッシングしているのが見えた。

営業部の林さんだ!

林さんと言うのは金融法人を担当してくれている営業さんで、奥田課長と同期の気さくな人だ。

営業部の人間は毎日電話でだけ顧客とやり取りしている私達トレーダーと違い、実際に顧客のもとに足を運んで信頼関係をさらに深めてくれる貴重な存在だ。

時々、営業に同伴して、顧客のもとに話をしに行ったりもするけど、そんな時、林さんの説得力のある話術に感動したりもしたんだよね。

たまに私とも飲みに行ったりして、何でも話せる頼もしいおじ様だ。

急いで、受話器でモニターを叩く。


「もしもし!」

「よぉ、杉原ちゃん?なんかどえらいことになってるって聞いたけど」

「さすが、林さん、情報が早いですね」

「今朝の朝礼で、奥田のヤツが報告してったからさ」

とほほ。

もう、社内周知が徹底されている訳ですね。

さすがです、課長。

「ははは。あいつも相変わらず手厳しいね。でも、ま、良かったら、こっちにおいでよ。力になれるかもしれない」

「本当ですか?!」

佐久間さんが隣で聞いていたらしく「良かったな。行って来いよ!」と親指を立ててくれる。

とにかく、タイムリミットは3日しかないんだ。

可能性があるなら、何でもすがろう!

「今すぐ伺います!」

私は取るものも取りあえず、急いで営業部目指して走り出す。



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