【完】TEARS−ティアーズ−


「別にケンカしてたわけじゃねぇんだけど」


これは本当。

この間のは、宮坂が一方的に怒っただけだから。


だけど、それを別に篠原に言うことでもないし。

なにより説明するのも面倒臭ぇ。


それに、俺の話なんてどうでもいいだろうしな。



「この間の事は、お互い忘れるってことでよくね?」



そう言うと、篠原は『うんっ』って満面の笑みを浮かべた。


思わず、その笑顔にドキッとしてしまった俺。


いや、だって……。

そんな無防備な笑顔するなんて思ってなかったし。

って、なに俺は動揺してんだよっ!



「郁君、どうしたの?」



俺の顔を覗き込んできた篠原に、赤くなってるであろう顔を見られないように顔をそむけ、



「なんでもねぇよ」



そう、ぶっきら棒に答えた。
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