幕末仮想現実(バクマツバーチャルリアリティー)
蛤御門
長州には長州の考えがあって、幕府には幕府の考えがあって、朝廷にも、緒藩にも、新選組にも…。

それぞれが、それぞれ自分たちの信じる道を選んで進もうとしてる。

誰がどうだとは、私には言えない。

ただ、誰もが、自分の信じる明日に続く道を選ぼうとしてる。

反発しあって、憎しみ合って、殺し合う…。

賢いやり方だとはとても思えない。

けど、300年近くも続いた江戸時代を終わらせて、新しい時代を切り開くには、ぶつかり合う、とてつもなく大きなエネルギーが、必要な時があるのかもしれない。

歴史って、時が自然に作り上げたものじゃないんだね。

後世の人が覚えやすいようにやってよって思った自分が恥ずかしい…。


「幕府にも、朝廷にも、入京の嘆願書を拒否された。久坂さんっ、こうなりゃ、力ずくで京都を奪い取るしかないじゃろっ」
「…」
京都の長州藩邸に集まって皆、殺気立ってる。
池田屋の騒動以来、桂さんはいなくなっちゃったし、今、久坂さんには相談出来る人もいない。
「池田屋で散った奴らの敵討ちじゃっ」
「そうじゃっ。もう、これ以上、話し合いは無用じゃっ」
久坂さん、どうするの?
「…わかった。明日の夜じゃ」
「明日の夜っ…」
「みな、戻って、それぞれの隊にそう伝えてくれ」
「おおっ!」

…。
明日の夜。
勝ち目があるの?久坂さん。

けど、あたしに止めるすべは何もない。

だから、こうなったら、あたしも乗りかかった船だっ。
長州藩と一緒に落ちるとこまで落ちようじゃないの。
って言っても、あたしはただ見とく事しか出来ないんだけど…。
久坂さん、死んじゃダメだよ、絶対。
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