CHANCE 2 (後編) =Turbulence=

1.Trial and Best

 



 8月7日(土曜日)


今日は、竹中早紀のPV撮影の日だ。


何故、この日をPV撮影にしたかと言うと、時代劇で有名な井下泰二さんがその日、同じく映画村で撮影が有ると言う情報が入ってきたからだ。


うまく井下監督の目に止まれば、いずれ声がかかるだろう。


巧く目論見が当たれば、老舗の時代劇でデビューが出来る。


力を使えば簡単にいくだろうが、それでは彼女の為にならないんだよなぁ……。


この世界で活きていくには、少しのチャンスをものに出来なくては駄目なんだ。


今日は、テジュンの友人で、アイドルオタクの江藤亮太君も見学する為に同行している。


俺の車の助手席に座り、後部座席に座る竹中早紀をチラチラ見て、テンション上がりまくりだよ。


「亮太君、今日はヨロシク!」


『うん!

誘ってくれて有り難うです。』


「いつも、テジュンが助けて貰ってるって聞いたから、お礼だよ。

まぁ、楽しんでいって!」


『ォ…オウ!

ヨロシクデゴザ…ル…宜しくお願いです。』


「何、緊張してるんだよ!?

もっとリラックスして!」


『…あぁ。』


何か、えらい緊張しているなぁ。


話に聞いていただけだから、どんなのが来るかと思っていたが、見た目は普通の大学生だよなぁ。


小太りで、ボンタンスリムのジーパンにチェック柄のシャツをタックインさせて、リュックを背負った秋葉系をイメージしていたんだけど、男前の好青年だから逆に驚いた。



~♪~♪~♪~♪~


「着いたよ。

ここが今日撮影する現場の映画村。

撮影クルーは、先に来てセッティングしているはずだから。」


『常務、それでは早紀を連れて衣装とメイクの準備してきます。』


「浅田マネージャー、それでは早めにお願いしますね!」


『チャンスさん、それじゃあ後で!』


「OK!

気合い入れていけよ。

うちの一押し俳優の、山崎幸次郎さんが相手してくれるから、しっかり学んでおいで。

台本は頭に入っているかい!?」


『ハイ。

バッチリ覚えて来ました。』


と言うと、軽く会釈してから浅田マネージャーと共に、映画村の中に用意してある控室に入って行った。


俺は、江藤亮太と一緒に撮影現場の方に向かった。


途中で、運良く井下監督に会い、挨拶を交わした。



< 50 / 371 >

この作品をシェア

pagetop