赤い狼 壱
:カラオケの代償
「ちょっと!あなた、早く起きてよっ!!」
「仕事は昼頃からなんだから、もう少し寝かしてくれよ。」
「じゃあもう起きた方がいいんじゃない?今、10時よ。」
「何っ!?早く起こしてくれよっ!!」
「何回も起こしましたっ!!」
…何だ?
お隣さん、また朝から言い争ってるの?毎日毎日よくやるねぇ。
壁が薄いため、防音なんて完備されていないこのアパートは隣の声が丸聞こえ。だから毎日、元気な夫婦の声が聞こえちゃう。
まぁこの夫婦、漫才夫婦みたいで結構聞くのが楽しかったりする。
ん~、と薄い掛け布団の中をもぞもぞと潜る。
夏だから暑い。
……って、ん?
さっき10時とか昼頃とか言ってなかった?
「ん~~?」
枕元にあった携帯を開く。
目を開けたばかりだから明るい液晶が眩しい。
時間は―――
10時っ!?
「ね、寝坊したーーーー!!」