渇いた詩
「テキトウに……鼻歌だからもう歌えないよ」



嘘だ、と思った。



鼻歌ならあんなに丁寧に歌わない。



「なんで?いいじゃん!!久弥、歌上手いよ!!!プロになれる!!!」



あたしがそう言うと久弥は弾くように笑い出した。



「なっ、何よ!?あたし真剣に言ってるんだからね!!!」


「悪い悪い!!アッハッハッ!!!」



久弥はとうとう腹を抱えて笑い出した。


ひとしきり笑ったあと真剣な顔をした久弥。



「桜……」


「何……?」


「好きだ」


えっ……。


久弥、今なんて……。


「桜。俺、桜のこと好き。返事は?」


「だって、あたしがさっき告白したとき何も言ってくれなかったじゃん!!」


「あれはいきなりだったから驚いたんだよ。まさかヤってる最中に告られるなんて思わなかったし。で、桜の返事は?」


そんなの一つしかない。



「好き」



あたしがそう言うと久弥はあたしにいくつものキスを落とした。
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