ありのまま、愛すること。

誇りを持って生きる

3月11日の東日本大震災のあと、私は被災地となった宮城県を何度も訪れました。

宮城の山元町は、海岸から国道6号線までの距離が2~3キロです。

大津波のとき、その国道を越えた山側にいた方は全員助かったのだと聞きました。

いまも自分の家で生活ができているそうです。

しかし、海側にいた方のほとんどは、津波で亡くなったり、行方不明になってしまった。

そして、生き残っても家を流されたり……。

大津波警報が出ても、大丈夫だと判断して荷物を取りに家に戻ってしまった方もいらしたでしょう。

それから、避難所が国道よりも海側にあって、そこに避難した方も津波にのまれてしまったと。そのことを私は、現地で聞きました。

そのとき思ったのは、「なんの因果もないじゃないか」ということでした。

人間に因果応報ということがあるのなら、「国道より海側にいた方が悪い人で、山側にいた方がいい人、海側にいた方が嘘つきで、山側にいた方が正直者」そうなってしまうじゃないかと、やり場のない思いでした。

そんなことではなく、たまたまだったとしか言いようがないでしょう。

人生にはなんの因果もないようなことが起きるんだということを、目の当たりにしてしまったんです。

私が思うのは、すべての現実を受け入れる勇気を持たなくてはいけないということです。

なにも悪くないのに、亡くなってしまった方が多くいる。

起きてしまった悲劇は現実のことなんです。

その現実を、すべてをまともに受け入れる勇気。

神様はその勇気を人間に求めているのだなと、被災地のど真ん中に立って、私は痛感しました。
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