ありのまま、愛すること。

ありのまま、愛すること。

バングラデシュのスラム街を訪れたときのことです。

体が棒のように痩せさらばえて、お腹だけプックリと出てしまった栄養失調児が、のたくさんたかっているご飯を口にしていました。

そして、その母親は焦点の定まらないような目で虚空を見つめ、その子を抱きかかえていました。

一生懸命に働いても、いつまでたってもそういう環境から抜け出せない人たちが、世界にはたくさんいます。

カンボジアのゴミ山で、有毒素がただようなかでゴミを拾いながら、着るものも、親さえもなく生きている子どもたちがいる。

ネパールやインド、フィリピンでも、状況は似ていて、物乞いをしながら生きている子どもたちは、学校にも行けない。

彼らを見ていると、私の心は突き動かされずにいられません。

いまも、彼らの姿が絶えず、頭の中を支配しています。

私が手帳に書き残している言葉(夢)です。

 ─私の残された使命とは、彼らが貧困から抜け出せるように、食事ができるように、住む家が持てるように、勉強することができるように……、それを実現することにあるとしか、言いようがない─

とあるエピソードを紹介しましょう。

カンボジアの孤児院で、二人の中学生が卒業を控えていたため、二人の進路について調べる機会がありました。

卒業する二人のうちの一人は、スレイノーイという女の子です。

勉強が好きで、どうしても高校へ行きたいと言うので、私はその子を高校へ行かせることを約束しました。

この子の将来の夢はSAJで働き、日本とカンボジアの架け橋となることだそうです。学年でトップクラスで、日本語も本当に熱心に学びます。

学校を訪問したときには、『無人島ウィー』を見事に朗読して驚かせてくれました。彼女が高校を卒業するころには、郁文館に留学させてあげたいとも考えています。
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