会社を清算した直後の父の姿は、瞼に焼きついています。

横浜の下町を歩いていたときのことです。

父は質屋の前で足を止めると、ショーケースに並んだ品々を覗き込みました。

あのカッコいい社長だった父が、いま、質屋で商品を購入しようとしている。

夢にも思わない出来事でした。

「どうしてこんなところで買うの?」

思わず、私は口走っていたのです。

「カフスボタンが必要なんだ」と言った父の、少し寂しそうな顔。

悔しかった─。

社員には誠実で真摯な態度を取り、いま、質屋の前で身をやつしている父。

そんな姿にしたのは、社会のせいだと思った。

そのとき、私は決意したのです。

「よし、僕は将来、社長になろう。絶対に、父の仇をとってやる!」