だからこそ、キミは。



多分、先生の顔の動きが一瞬止まったのを、クラスメートは知らない。


私でさえも、目を凝らして見なくちゃ、わからない。




「上園は、こんな中学生レベルの問題もできないのか。」

『……っ』

「炭素と酸素がくっ付いたら、二酸化炭素ができるに決まってるだろう?」




いつものように、ニコリともせず淡々に喋って。

いつものように素っ気なく、先生は教卓へ戻っていく。



―…先生は、“何もなかったフリ”をするのが、得意。




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