AZZURRO

黒幕の陰謀

「…お前が…神官か。」


クリスの低い声が
その場に響く


神官は必死でもがいているが
二人の拘束は緩む事もなく

ポールが
神官の被っていたマントを
取り去った


月明かりに照らされて出てきたのは


髪は薄く
頬はコケ

前歯のない口元と
深く刻まれた皺が印象的な
高齢の男


「くっ…。」


素顔を見られた神官は
悔しげに顔を伏せる


「…ムヒデリ神官?」

ジャンの声に
ムヒデリは肩を震わせた


「ジャンさん知り合いなんですか?」

雪乃の問いにジャンはゆっくり
ムヒデリに近づく


「ムヒデリ神官。
数十年前までは大神殿の神官長まで務め
民や貴族、そして皇族からも信頼の厚い
慈悲深い神官でした。


だが
数年前…突然神官の一人を殺害し
逃亡。

噂では禁断の儀式をひそかに研究し
殺された神官は生贄ではないか…
ともいわれました。」


「大神殿の神官長…。」

雪乃はまだ神官長に会った事はなかったが
その響きから
とても高貴で
誇り高い地位なんだと感じ取れた


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