モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語
双子、バレる

*

どうしてこうなってしまったのだろう。

「今、遥君帰ってきたんだって!」

嬉しそうに話し出す理子に海は表情を歪めた。

「そ、なんだ…」

はっきり言って、今は会いたくなかった。

「あれ?会いに行かないの?」

「う、うん」

実は、冬樹と海は付き合ってはいなかった。

理子から昨夜聞いた話によると、冬樹と海が二人きりでドリンクを作っていた時の告白を目撃した部員が居たらしい。

初めはその事だけが噂となり広まっていたのだが、だんだんと話は大きくなり

海と冬樹が付き合っている

という事になっていた。


「調度いいじゃん。両想いなんだし、今日返事して付き合うんでしょ?」

まるで自分の事のように嬉しそうな表情を見せる理子。

海は否定できなかった。


はっきりできない自分にイライラして、罪悪感が込み上げてくる。

俯けば、理子は心配そうな表情を見せて 大丈夫? と問い掛けてくる。

海はすべてが理子の計らいだという事に気づかぬまま、深く悩んでいた。



「海が行かないなら、あたしは遥君のところいってくるねっ!」

「あ、うん…。」

「先に洗濯してて!あたしもすぐ行くからっ」

海に洗濯を頼み、部屋のドアを閉めて理子は行ってしまった。

ぽつんと一人残された彼女は大きな溜息をつくと、ジャージに着替えて洗濯室へと向かった。



「あ!地味…じゃなかった。筧さん。」

「あ…、」

健二が人のいい笑みを浮かべて海の元にやってくる。彼に悪口を言われた過去を思い出し、無意識に数歩後へ下がるとそれをみて困ったような表情を見せた。


「前は、ごめんな。」
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