モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語
「…え」

「まわりにあわせて、悪口言ってた事…許してくれとは言わないけど、ゴメン」

思わぬ謝罪だった。

海は驚いたような表情を見せ、そしてまじまじと健二をみる。


「私も、変わろうとしなかったのが悪かったの…だから、ごめんなさい」


「は?なんで筧さんが謝んの!?」

謝らなくていいだろ!と声を張り上げる彼に海は思わず笑った。

それをぽかんと見つめ、健二は遥が海の事を想っている理由がなんとなく分かったような気がした。

さっきは彼にキツくあたってしまった。
後悔が健二の胸を締め付けた。


二人は沈黙する。

何を話そうか、と海は悩む。このまま健二と別れて洗濯室へ行こうと思った時だった。


健二は あの! と声をあげる。



「話したい事があるんだ…時間ある?」


「う、うん。」


なんだろう、と首を傾げた。そんな彼女についてきてと言うと、裏庭へと向かう。

人は居なかった。
海に緊張感が走る。


「…筧さんにこんなこと言うのは可笑しいけど、

冬樹じゃなくて、遥と付き合ってほしい」

ドクン

心臓が大きく唸ったような気がした。

(俺、何言ってんだ!?)

健二も内心焦っていた。

こんなことを言うために海を呼んだんじゃないのに、遥の苦しそうな、悲しそうな表情を思い出すといてもたってもいられなくなる。
お節介だと怒鳴られるかもしれない。

けど、親友の幸せを考える健二にとっては言わなければいけないことだった。

「…。」

「筧さんは好きな人いるの?」

「わからない…の。」

「わからない?」

こくん、とうなづく海。
健二はもどかしい気持ちになる。

「なら、冬樹とはまだ付き合ってねえよな?」

「あ、当たり前だよ!それはただの噂だからっ」

それを聞いた瞬間、健二はよかったああと肩の力を抜いた。

もし海と冬樹が付き合えば理子は迷わず遥を狙うだろう。そうなってしまっては自分の恋も終わるし、親友が幸せになれない。

「ならさ、俺と同盟組まない?」

「ど、同盟!?」

思わぬ発言に海は目を見開いた。
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