モテる弟をもつ双子の姉の地味子の物語

「なんかようか?餓鬼ども。」

いかにも柄の悪そうな男だった。

海は少し怖くなり、遥の服を掴む。

「住み込みでバイトができるっていう看板を見たんですけど

本当ですか?」

「ああ、アレを見たのか。本当だぞ。」

「俺たちを雇ってくれませんか!」

急だということは十分承知している。

男はじっと二人を見た後に、口を開いた。


「駄目だ。」


「なんでですか!」

「お前達、仲良く家出してきたんじゃないのか?」

ドキ、

勘が鋭い。

「違います。近くに祖母の家があるので、

しばらく遊びに来ていたんです。」

遥は堂々と嘘をついた。

「・・・本当か?」

「はい。」

「お前のばあちゃん家に帰らなくていいのか?

泊まり込みになるんだぞ?」

「大丈夫です。」


どうすっかなあ、と男は考えた。

二人の真剣な眼差しを見て、はあとため息をつくと

男は口を開く。

「しょうがねえな、いいぜ。」

「「ありがとうございます!」」

思ってもない了承だった。

二人は笑顔を向ける。

男はそれを見て頬を少し染め、客寄せに使えると内心思った。


「明後日から祭りが始まるからな。

忙しくなるし、特別住み込みでバイトを募集してたんだ。

しっかり働いてもらうからな。

・・・よろしく、俺は沢田だ。」

「筧遥です。」

「筧海です、よろしくお願いします。」


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