置き去りの季節

悲しみは人格を壊す凶器のようで。

ピピピピピピピピッ…
突然目覚まし時計がけたたましい音を立てて鳴り出した。二本の針で六時半を指し示しているそれを止めると、私は着なれた制服に着替え始めた。
顔を洗ったり髪を整えたりして、適当に朝食をとり家を出る。

「梨央ーっ、おはよー!」
電車を降り駅を出て学校まで歩いて向かっている途中後ろから友達に声を掛けられて振り返る。
「おはよう、美咲。今日も相変わらず無駄に元気そうだね。」
「梨央は今日も相変わらず無駄にツンケンしてるね、なにそれツンデレ?」
一見仲の悪そうな二人の毒の吐合のような会話に聞こえるかも知れないが、美咲とはたぶん一番の親友なんじゃないかと思ってる。お互いにこんな風に嫌味のようなことを言い合えるのも、仲が良くないとできないことだと思う。
「ねえ、私っていつからツンケンしてる?前はそうでもなかった気がするんだけど。」
不意に投げ掛けてみた質問に、美咲は一瞬ギョッとした顔をして、少し気まずそうな表情を見せた。
「…今年の夏から。それまでは明るい普通の子だったのに、それからはなんか、色々なことに疲れた、みたいな顔してる。こんなこと言うもんじゃないと思ってるけど、やっぱり、藤井君が原因かなって…。」
「そっか、ありがとう。だよね、やっぱり。」「忘れるとかはまだ無理だとしても、早く元気になりなよ?そんなんじゃ藤井君も浮かばれないと思うし…そのうち化けて出ちゃうかもよ?」
「そうだね。」
そこまで話してるうちに、学校まで到着した。
美咲の言った言葉を、あのとき私は、私を励ますために言った何でもない軽口くらいにしか思っていなかったのだ。
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