シュークリーム
村上君が電話の相手に気を取られている隙に、グラスを奪い返した。


その直後、勢い余ったせいで零れたワインが、テーブルに不揃いな水玉模様を作った。


「あっ! おいっ……!」


止めようとした村上君よりも先に、ワインをグッと流し込む。


香りを楽しむ間もなく飲み干し、ボトルにも手を伸ばす。


ただただ苦しくて、この感覚を忘れるために見付けた逃げ道が目の前にある赤ワインだった。


電話の相手を気にしながらも私を止めようとする村上君の顔が、少しずつぼやけていった──。


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