君が愛した教室

小さな秘密基地


あれから、先生に物理のこと色々教わった。
何でも、理科という教科の中でも一番難しい科目なんだとか…

もしかして私、とんでもないモノに足を踏み入れちゃったのかも...

でも、選択すると決断したからには、頑張らなきゃ。
吉原先生を困らせる事なんか出来ない。
夏の補習でブランクがある分他の人の3、4倍は努力しないと。


『帰り、本屋で参考書』

忘れない様に手の甲に赤ペンで書いた。

すると、その手をぐいっと誰かに引っ張っられて声に出された。

「本屋で参考書……ちょっと前までどこか上の空気味だったのに、沙奈ったら何かあったの!?いきなり理系行くなんて言い出すしさ!」

「里子か、びっくりしたぁ。参考書は…まあ、ね。物理選択しようと思って。そのために。理系も…物理選択のため。かな…」

『物理』って言葉を言うだけで、どこか恥ずかしくなっちゃう。
だって、連想されるのが吉原先生だから。
連想して頭の中に浮かぶ先生の笑顔に、ついにやけちゃう。

そんな私を里子は逃さなかった。

「沙奈がにやけてる!!ははーん、さては…恋ですか?」

里子は秘密を暴く探偵の様な目つきで私を見た。

ダメダメっ。その目は弱いんだってばっ。

恋バナをする時はいつもそう。
だからつい里子のペースに乗せられちゃって、全部話しちゃうんだよなあ。


でも、今回ばかりは。

「うーん…秘密!」

さすがに里子でも話せれなかった。

先生が好きだなんて...


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