秘密
◇第7話◇
◆◆◆


「あ。兄貴、どっか服買える店寄って」

「何お前?服買うの?」

「俺のじゃないよ、母さんに」

「母さんに?ああ、母の日?」

「…うん」

「はは。珍しいな、茜がそんな事考えるなんて、俺も用意してなかったし、ちょうどいいや俺もなんか買お」

そう言って兄貴は俺の地元にある大型ショッピンクモールへと車を走らせた。

少し薄暗くなりかけてたけど、土曜日のモール内の駐車場は、まだまだ沢山の車で埋め尽くされていた。

田舎で何もない所だけど、ここに来れば映画館や綜合アミューズメントパーク、飲食街、様々なショップ、家電量販店、全国チェーンの大手スーパー等が建ち並び、一つのちょっとした街になってる。
週末等は家族連れや、カップルで賑わう。
まあ、田舎にはよくある郊外型のショッピンク施設みたいなモンだ。
何とか空いている駐車場に車を停めて、車を降りると奏は、はしゃいだような声を出す。

「わぁ。広い駐車場だね?遊園地みたい」

今俺達が住んでる街は、ごちゃごちゃとしていて、これだけ広い駐車場はまず無い。

「行こうか?」

奏に手を差し出すと、

「…うん」

うつ向き、遠慮がちに指を絡めてきた。
どこまでも可愛い仕種の奏の破壊力に頭がクラリとしてしまう。

「…おいおい…二人とも、俺が居ること忘れてんだろ?ピンクのオーラが出てるよ?」

「あ。兄貴、居たの?ははは」

「全く…ほら、行くぞ」

先にズンズンと歩く兄貴。
羨ましいか?ざまみろ。

「佐野君。お母さんに洋服買うの?」

「うん。奏と一緒に選ぼうと思って、俺じゃ女物の服なんてわかんないし」

「佐野君がくれる物なら、お母さん、なんだって嬉しいんじゃないかな?」

「そうでもないぞ、気に入らなかったら、気に入らないってハッキリ言うぞ?うちの母さんは」

「え?そうなの?」

「うん、前に誕生日に赤い帽子プレゼントしたら、こんな派手な帽子かぶれるかって言われた、それから母さんには何もやってない」

「…なんか、責任重大だな…」

「奏が撰んでくれたら間違いないよ、俺、センス無いんだよ、ははは」

「…頑張って選ばなくちゃ」

と、絡めた指に力が入る奏。


< 191 / 647 >

この作品をシェア

pagetop