ある人妻の過去
裕樹との出会いは、バーだった。


この頃の私は、人生を投げやり、自分の心体を痛めつける行為で、かろうじて息をしていられた。

でも、生きてる実感などない日々。


そんな私に、裕樹は予告もなく近付いて来たんだ。


 「智子やろ~?」


知らない男に、不意に自分の名前を呼ばれビックリ。


 「アンタ誰?」

私は、飲みかけのジンを飲み干しながら、その男を睨みつけた。



 「俺?
  こういうモン」


男は、胸ポケットから免許証を取り出し、私に差し出した。



 「原…裕樹?」


これが、私と裕樹の出会い。


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