HONEY*ときどき*BOY


同じ大きさの文字が並ぶ中に浮いた大きい文字は

あまりにもはっきりしていてすぐに見つかった。



目の前には、四角い半紙に書かれた『秀』の文字。



書道の大会がどんなものかわからないオレには

これがどんな評価を受けたのか、詳しいことはわからない。



力強く打たれた1画目。

いきいきと動いた2画目。


左右にすっと伸びた払いの間に、『乃』が不思議なバランスでおさまってる。



シャーペンでは絶対に書けない太い線と細い線の組み合わせが、何だか心地よかった。



でもさ、何でこの字なんだろ……――――



「期待して良いってこと……?」



“期待”って、何の期待?


自分で思ってみたけど、わかんない。



『秀!』



頭の中に、昔の羽月ちゃんの声と笑顔が浮かぶ。



今の羽月ちゃんの声でそう言われたらどうなるんだろ……



そんなことを考えてから、小さく笑った。



「何考えてんだよ、オレ……」




オレは、何となくそこを動きたくなくなって……


目の前の文字を眺めながら、しばらくぼーっとしていた。

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