パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~
第9章 キミの叫び



~愛しさは苦しさ~




仕事を全て終え、奈桜は自宅のベランダから静かな街の夜景を見る。
この時間は『ひとり』。
灯りを見ながら色々ぼんやり考える大切な時。



小さな頃から、気付けば空を見ていた。
夏の、どこまでも高い、水色の空が1番好きだった。
ひまわりの黄色が映えて眩しくて、それが奈桜の子供心を何かいい事ありそうな予感へと誘っていた。



「クワガタ、見てねぇな」



記憶が幼い頃に飛ぶ。
悩みは『どうやったら宿題をしなくて済むか?』という事だけだったあの頃。
そんな事に真剣に悩んでいた事に笑ってしまう。
今、あの頃の自分に会ったとしたら。
やっぱり、そのまま悩ませてやるだろう。
今、こうして笑える自分がいるから。
今の悩みの、きっと予習になってると思うから。



そんな事を考えているうちに現実の問題に引き戻される。
頭の隅っこに追いやられていた難問が、グググッと思考のど真ん中に現れて来る。
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