恋のWボランチ
キックオフ
「残り1分~~~!!」
グラウンドの半分を使ってのミニゲームに夢中になっているサッカー部員に、大きな声で告げた。

次の瞬間、サイドから絶妙のセンタリングが上がり、それにヘディングでシュートしようとFWが飛び込む所に、パンチングでセーブしようと飛び出すGK。

二人が同時に触れたボールは真上に押し出され、まるで日食の様に夕陽を遮った……。




「おつかれさま~」と言って、エースの亮太にスポーツドリンクを手渡すと、亮太は「おせーよ」と不満げな表情を浮かべる。

サッカー部のマネージャーなんだし、当然だろ…とでも言いたげだ。まっ毎度の事だから気にならないけど、相変わらずのドSキャラ。

秋の県大会で3年生の先輩が引退してから、益々キャラに磨きがかかった亮太は、自他共に認める桜ヶ丘のエースだ。

常々、亮太は「俺が点を取って負けた試合はない」と豪語している。

ゴクゴクと音が聞こえそうな程、勢いよくスポーツドリンクを飲み干すと、亮太はまたグラウンドに走って行き、得意の居残りFKの練習に明け暮れるのである



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