恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

光と影

あたしはたぶん、死んだように眠っていたのだと思う。


目が覚めた時、部屋に差し込んでいたのは朝陽ではなく、暑い熱い西日だった。


いつものようにスマートフォンで時刻を確認しようとして、手探りで枕元を探した。


無い。


「……ああ」


そうか。


昨日、壁に思いっきり投げてそのままだった。


ベッドから出て、情けなくて苦笑いした。


床に散らばったスマートフォンの本体と、電池パック。


なんとも無残な。


画面が割れなかった事が不幸中の幸いだ。


でも、驚いたのは事実で。


東京に居た時は、片時も携帯電話を離せなかった。


食事中も、トイレも、あわよくばビニール袋に入れて入浴中もしていたほどだ。


スマホ依存症だったのかもしれない。


触れていないと不安で怖くて、この世界から放り出されて、ひとり取り残されてしまうような気がして。


だから、携帯電話やスマートフォンを持ってから初めてだった。


その存在を忘れて、深い深い眠りから目を覚ましたのが。


ひとつでも電池が減ろうものなら、ファーストフード店に入り、すかさず充電していた。


でも、初めて充電もせず、一晩を越した。


散らばった電池パックを差し込み、電源を入れ、時刻を確認した。


16:30


思わず、ぎゃ、と声を漏らしそうになった。


こんなに長時間眠り続けたのも、人生初で。


目が覚めたことにほっと胸をなで下ろしている自分を感じたのも、初めてだった。


センターにメールがたまっていないか、問い合わせる。
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