恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

涙ぽろぽろ

最近、夕餉が終わる頃になると、おばあの家の玄関先に可愛い小さな訪問者が現れる。


「にぃー」


その子の名前は“ルリ”。


美波ちゃんが名付け親だ。


アメリカンショートヘアーに良く似た模様で、だけど、おそらく、ただの雑種だ。


まだ小さな子供で、瞳が瑠璃色だ。


「えー。ルリー。カフーアラシミソーリ」


さすがの無愛想なおばあもよほど可愛かったらしい。


いつも夕餉の残りをルリにおすそ分けするのだ。


カフーアラシミソーリ、とお祈りをしながら。


それから毎日、夕餉が終わった頃に、ルリは現れるようになった。















9月といえども、秋の気配はまだまだほど遠そうだ。


ハケで塗ったようなターコイズブルー色の空が広がっている。


下校時刻になった教室の騒がしさに負けないくらい、開け放たれた窓からわんわんと蝉の鳴き声が入ってくる。


どんよりとした曇り空のようなあたしの心とは裏腹に、今日も良く晴れ、眩しい陽射しがたっぷり降り注いだ。


昨日はほとんど眠れず、朝を迎えた。


お陰様で体はだるく、授業も頭に入らず、ぼんやりしていたら下校時刻になっていた。


「はーるひ」


掃除を終え、ゴミを捨てに行こうと教室を出た日直のあたしから、


「……あっ」


「それ、よこしよーさい」


ひょいとゴミ箱を奪い取ったのは、Tシャツと丈の短いハーフパンツにソックス姿の里菜だった。


「里菜」


制服姿の時とはまるで別人で、部活の練習着姿の里菜はボーイッシュでかっこいい。


「大丈夫かね」


心配そうな顔で里菜が見つめてくる。


「大丈夫だよ。焼却炉って1階の渡り廊下の先でしょ」


「そうじゃねーらん。具合でも悪いんか」


「へ? 別に」


ふるふる首を振ったあたしを、里菜は疑り深い目でじいーっと見てくる。

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