世界が終わる前に

僕らの世界は、繋がっていた



家に着いたのは、時計の針が午後十時を回った頃だった。



自宅の門前まで送ってくれた黒斗くんにお礼を告げて、器用に自転車を方向転換させた黒斗くんをそのまま見送ろうとしたら、



「俺が見てる間に、中入れ」



送った意味ねェだろ、と。睨まれてしまった。


なので、大人しく家に入る事にした私は「気をつけてね」と名残惜しげに言葉を投げて、自転車に跨がった黒斗くんがゆるく片手を上げたのを見て、後ろ髪を引かれる思いで玄関扉を潜った。


扉を閉めてもまだ尚、胸がドキドキしていて、踊り続ける鼓動は中々鳴り止まなかった。


いつになく乱雑にローファーを脱いで左側へ伸びた二階へと続く階段を駆け登り、そこの左側にある自分の部屋の扉を開けて飛び込んだ。


乱暴に通学鞄を勉強机に投げ置くと、遮光カーテンを開けて曇った窓から下を見遣った。


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