できちゃった結婚〜もしも俺が赤ちゃんになったら〜
03...伝えたい想い

「今日はお天気いいね。」「お日様があったかいね。」と希はベビーカーにいる俺に声をかけながら、散歩に出掛けた。


いつもより低い視点で見る風景はなんだかとても新鮮で、ベビーカーの幌から希の顔を覗くと、微笑んでくれる……それがとても嬉しい。


「今日はパパ早く帰ってくるかな〜……晩御飯何にしようか…パパが好きな肉じゃがにしようかな。ね、真紘♪」


希は俺(真紘)にそう声をかける。


ケンカしても、ちゃんと俺の飯用意してくれるんだな…ないと思ってた。


いつだったか、独身の上司に言われたことがある……

「家に帰って飯が用意してあるって羨ましいなぁ。」って。


その意味がその時はわからなかった。

俺は1人暮らしなんてしたことがなかったから、結婚する前は母さんの作ったご飯があって、結婚してからは希の作ったご飯がある。

それが普通だと思ってたけど…
とてもありがたくて嬉しいことなんだ。


いつも家で帰りを待ってくれている人がいること。

俺の為に一生懸命ご飯を作って待ってくれている人がいること。


昨日も希は待っていてくれた。

記念日に、俺の好きなオムライスとケーキを用意して。


なのに……


俺は昨日希になんて言った?



「真紘、ついたよ。ここはママの好きな場所だよ。」


そう言って、希はベビーカーの幌を上げた。


目の前に見えたのは、地平線いっぱいに広がる青。

綺麗な青い空のせいで、それはまるで世界いっぱいに広がっている気がした。


「綺麗だね。」


ベビーカーに寄り添い、眩しそうに目を細めて景色を眺める希。


いつかに二人で来た海。

二人がまだ付き合っている恋人だった頃に何度も来た海だった。


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