ちいさな手
虐待


ごめんなさい…叩かないで……

この言葉を親に何度言っただろう。

いや……一度も言えなかった。

言ったら…もっと、叩かれていたから。


毎日、心で叫んだ………


お願い叩かないで………

でも…誰にも、その声は届く事がなかった。

父親の極度の束縛と鞭打ちは私が大人になるまで変わることがなかった。


ムチは虐待ではなく躾だと親は言った。

子供を愛してるから私をムチで叩くとも毎回、聞かされた。

私が何を悪いことしたの?


『なぜしちゃなぜダメなの?』

疑問を親に言っただけで反抗的だと言われ金属製の靴べらでお尻を思いっ切り叩かれた。

一回……??そんな事はいちどもない。

必ず10回の鞭打ち。


叩かれてすぐにお尻はムラサキ色に腫れ上がった。

次の日の体育の時間も、そのアザは消えず体操服を着るのが、とても恥ずかしかった。


食事中に味噌汁をうっかりこぼしても、鞭打ちだった。


小さい私にはコタツが高すぎで正座しても、オカズを取る時にひじがついてしまう。

それだけで、行儀が悪いと箸で手の甲を叩かれ何日かの間、痛くて左手を握ることができなかった。


叩かれた後は、泣きやもうとしても…嗚咽がひどく、すぐに泣きやむことが出来なかった。

そんな私を見て『いつまでも泣いてるのは反省してない証拠だ…』との理由で、その日は合計20回叩かれた。



また別の日、我慢して泣かないようにしていたら、親を睨みつけてると言われ……


同じ回数鞭打ち。

一体なにを求めてるの?
小さい時はプラスチックの靴べらで叩かれていたが、何度も縦にヒビがはいり靴べらが壊れるので最期は金属製の靴べらで叩かれることになった。


私は親の顔色ばかり伺い………幼少期を過ごした。


毎日、生きた心地が全くしなかった。


いつか大人になったら、すぐに家を出ようと決意していた。


18歳の夏ついにその時が来た。


『お前みたいな奴は出ていけ!』

父親は私がお金を持っていないのを知っていて、その言葉を発した。

その時の所持金は2000円。









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