ショコラ~恋なんてあり得ない~

7 彼の進路

 カウンターの一角に陣取った彼は、おもむろにノートと参考書を広げた。
注文のケーキを厨房からとってきたあたしは、ちらちらとそれを覗き見したりしている。

コーヒーを入れているのはマサ。
時折りこっちを見てはニヤニヤと笑う。

あたしの変化に気づいているのかいないのか。
どっちにしろ気まずい。
ああもう、さっきからかわなきゃ良かった。


「詩子、お出しして」

カップに注がれたコーヒーをお盆に入れて、マサが言う。
カウンターに居るんだから、アンタがそのまま出せよって思いつつ、やっぱりどこかで彼と話したいと思っているあたしは、素直に頷いて彼の目の前にコーヒーとケーキを置く。


「お待たせしました」

「ありがとう」


参考書から顔をあげて、宗司さんがにっこりほほ笑む。
まるで何もなかったみたいな笑顔。

あたしは結構気になってるんですけど。

酒癖悪い女とか、口の悪い女とか思われてんのかな、なんて。
考え出すとキリがない。

行動一つ一つ思い返してみて……ああもう、思い出したくないわ。
絶対一つも良い印象なんて与えてない!

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