ヴァンパイア王子~覚醒のblood~
「……なるほど。噂では聞いていたが凄まじい気だな。

お前が王族に仕える殺し屋か」


「殺し屋とは失礼ですね。わたくしは高級執事でございます」

赤銀はひらりと身を翻すと、いつの間にか窓が開いており、サッシに足をかけて今にも飛び降りそうな格好で振り向いた。


「今は戦わない。まだ本調子じゃないんでね」


「おや、逃げるのですか?」


「時期が来たらお前とも一戦交えるだろう。だが今は時期早々だ。それまで首を洗って待ってることだな」


「その言葉、そっくりそのままお返しします」


バドの言葉に赤銀は小さくほほ笑むと、怜央を一瞥して「またな」と言って窓から飛び降りた。


「お、おい! ここは4階だぞ!」


怜央が叫んで、飛び降りた窓に駆け寄り地面を見下ろしたが、そこには誰もいなかった。


「あいつは……一体……」


怜央の呟きは穏やかになった風に吹かれて消えていった。

< 74 / 370 >

この作品をシェア

pagetop