私はその日、昔の彼女が人を殺したことを、テレビのニュースで知った。

報道によると、北村香奈子(28)は、交際中の男性、坂本佑輔(23)を包丁で刺し殺害。

死体を放置して、行方が分からなくなっていたが、今日未明、品川区内の路上で捜査員に発見され、犯行を認めたため、身柄を確保された。

現場は被害者の坂本佑輔宅で、第一発見者は被害者の友人男性。

連絡が取れなくなったことを不信に思い、被害者宅を訪れたところ、玄関の鍵が掛かっておらず、扉を開けて発見した。

テレビの報道では、概ねこんな内容だ。

私と香奈子が付き合い始めたのは今から13年前、私が20歳で香奈子が15歳だった。

当時、私は法学部の学生で、香奈子の家庭教師をしていた。

高校に入学したばかりの香奈子は優秀で、私が教えていたのは、大学入試のレベルだった。

知能が発達していたせいか、香奈子はとても大人びていた。

そんなところも、好きになった原因の一つかもしれない。

「しかしなぜ香奈子が?」

昔の彼女だということを差し引いても、香奈子が人を殺すなんて信じられない。

深い事情を知りたいと思った束の間、電話が鳴った。

「警視庁の志田さんから電話が入っています」

事務員が取り次いだ。

「私です。用件は分かっています」

すぐに、香奈子の件であることは察しがついた。

『さすがですねって、言いたいところなんですが、容疑者本人からの依頼です。本来ならば、裁判所を通して正式に依頼するんですが、急いだ方が良いと思いまして、直接お電話致しました』

必要な事務手続きを省いたことを、内密にしてくれと言って、志田は電話を切った。

至急、香奈子に会いに行った。

彼女に会う前に、担当捜査官の志田警部に話を聞いた。

「容疑者はなんて言っているんですか?」

私は敢えて【容疑者】と言った。

「北村香奈子は、先生の教え子だったんですよね?」

「教え子と言っても、高校在学中の3年間の家庭教師です」

「家庭教師以上に、容疑者のことを熟知しておられますね」

「何が言いたいんです?」

私は職業柄、警察を敵視することもあるが、この時は目の前の刑事一人に、鋭い視線を浴びせた。

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