AKIRA

陽side




~ 部活始動:陽side  ~







「よろしくお願いします!」

 女子テニス部の方から、そう大きな声が聞こえた。

 その中に、晶の姿もある。

 やっと入って来やがったか……待たせやがって……。

「お、アキがやっと入って来た――――っ」

 そんな声をあげたのは、服部だ。

 そうだ、こいつ、晶の事を狙ってるのバレバレなんだよな。

 あれから毎日、いや毎時間と言っていいほど、二組のくせに六組に来やがる……まさしく要注意人物だ。

「おい一年、さぼってないで、さっさとネット張れよ!」

 そう声を荒げたのは、二年の久石先輩だ。

 今一何考えてんのかわかんねぇ奴だし、なんか俺の事を異常に敵視してくるし、厄介な先輩だ。

 それ以外の先輩方は、割と喋りやすいし不満はないんだけどな。

「じゃ、まず各自ストレッチやってから二人組になってボレー」

 寺倉先輩が全体に響く声を上げる。

 この人は穏やかそうに見えて、練習ではきっちりしてるし、何かと頼れる先輩だな。

 俺は、ようやくネットを張り終えた。しかし、今日もいつにも増してギャラリーが多い……はっきり言って、うぜぇ。

「あ、江口ストレッチ終わったら一緒にやろうぜ」

 そう言って声をかけてきたのは、同学年の村井だ。こいつとは北中から一緒の腐れ縁ってやつだな。

「おう」

 それから、俺は村井と組んで、女子コートに一番近い場所を陣取った。

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