Dear my Dr.
「ずっと会いたかった」

きゅん、と切なくなる言葉。

「僕のワガママで、こんなに遠くまでついてきてくれて、本当にありがとう」

「何言ってるの。私が好きで来てるんだから!夢だった海外生活ができるのも、悠ちゃんのお陰だよ」

学生のときには叶わなかった留学。

身体が弱いからって理由で。

それが、悠ちゃんがいてくれるから、少し遅くなったけど実現できた。

小さい頃の夢は、お嫁さんになること。

すこし大きくなってからの夢は、海外で語学を学ぶこと。

どちらも夢が叶った。

「悠ちゃんの夢って何?」

「夢、かぁ…」

しばらく考えたあと、にっこり笑って言った。

「町のお医者さんになることかな」

「あれ??茅島病院は?継がないの?」

「病院は兄貴に任せておくよ」

なんか、意外。

でも、のんびりしてる悠ちゃんらしい発想だけど。

「小さくてもいいから、診療所を持ちたいんだ。日帰り手術ができるような施設を、日本にも作りたい。今はその技術を学びに来てるんだよ」

「日帰り手術!?」

「頭は開けずに、血管内で治療するんだ。脳出血の予防の段階で、悪い血管を治療しておく。そういう風習が日本にはないだろ?」

「…なんかよくわかんないけど、スゴイね。そしたら、茅島病院の出番が無くなっちゃうんじゃないの?」

「そうかもしれないね。何年先、何十年先かもしれないけど」

悠ちゃんは笑った。

何十年先になるかもしれない。

それでも…

「こんな大きすぎる野望を持った医者だけど、ついてきてくれる?」

「もちろん!」

どこまでだって付いて行けるよ。

あなたが愛してくれるなら、ね?

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