Dear my Dr.

式典

高めのヒールを履くと、自然とちょっと背筋が伸びる。

「美波さん、おキレイですよ」

そう言ってくれたのは、茅島病院長のお付きの運転手さんだった。

今日は、知り合いの先生(医師)の病院の創立50周年パーティー。

茅島院長は他に用事があるとのことで、出席できないらしい。

だから、悠ちゃんが代行で出席することになったわけで…

いかにも高級車って外観の車。

一応、病院の持ち物ということになるらしく、私物ではないらしい。

つまり、今日の式典は仕事。

「美波あんまり飲んじゃだめだよ?」

「わかってますよ!」

「すぐ酔うんだから…」

「わかってます!」

後部座席での、そんな私たちのやり取りを聞いて、運転手さんがほほ笑む。

そういえば、悠ちゃんの左手の薬指には指輪。

普段は仕事でつけられないけど、こういう場ではつけるんだね。

ふーん……

「なに?」

「ううん、おソロだなーって」

「何が?」

「結婚指輪が」

「当たり前でしょ!?今更なに言ってんの?」

悠ちゃんが吹き出した。

なんか変なこと言ったかなぁ?

「そういうとこ、天然でカワイイよね」

ポツリ、そう言われると、妙に照れる。
< 98 / 120 >

この作品をシェア

pagetop